SFサブジャンル総まとめ

ハードSF <宇宙開発・工学>Engineering

リアルな科学設定で描かれる、宇宙開発の現場と技術者のドラマ

ハードSF <物理・数理>Physics / Math

物理や数学を突き詰め、宇宙の仕組みや存在の謎に迫る思考実験

バイオSFBiological

生命の進化や環境の変化を、科学的な想像力でダイナミックに描く

スペースオペラSpace Opera

広大な銀河を舞台にした、最新の科学とドラマチックな冒険の旅

ロボット工学・AIRobotics & AI

AIやロボットとの出会いを通じて、人間とは何かを問い直す物語

ファーストコンタクトFirst Contact

異星人とのコンタクトを通じて、未知の存在を理解する難しさを描く

サイバーパンクCyberpunk

高度なネット社会の陰で、科学技術に振り回されながらも抗う人々の物語

ポスト・サイバーパンクPost-Cyberpunk

ハイテクが当たり前になった社会で、一市民として生きる葛藤を描く

ポストヒューマンPost-human

テクノロジーによって人間を超えてしまった存在と、その先の未来

タイムトラベル / ループTime Travel

時間移動の果てに、変えられない運命と自分自身の救済を模索する

ディストピアDystopia

完璧に管理された恐ろしい社会で、自由と自分らしさを求めて苦悩する

ポストアポカリプスPost-Apocalyptic

世界が滅んだあとの荒野で、どう生き抜き、何を守るのかを問い直す

スチームパンクSteampunk

蒸気機関が極限まで進化した、レトロでどこか新しい「もしも」の過去

バイオパンクBiopunk

命さえも売り買いの対象になる世界で、人間の尊厳をかけて抗う物語

ソーラーパンクSolarpunk

環境破壊を乗り越え、自然とテクノロジーが調和する持続可能な未来

ホープパンクHopepunk

絶望的な現実でも仲間を信じ、優しさを武器に未来を切り拓く闘い

歴史改変SFAlternate History

「もしあの時、歴史が違っていたら」という分岐点から広がる異世界

形而上学SFMetaphysical SF

現実とは何か、意識とは何か。SFの仕掛けを使って哲学的な謎に挑む

ニュー・ウェーブThe New Wave

宇宙よりも「人間の精神世界」を、芸術的で前衛的な手法で描き出す

スリップストリームSlipstream

日常に侵入する奇妙な違和感を描き、SFと文学の境目を揺さぶる

ジェンダー / フェミニズムSFGender / Feminism SF

性別や社会の決まりごとを疑い、新しい自由な生き方を模索する物語

宗教 / 神話Religion / Mythology

科学が進んだ時代だからこそ、魂の行方や救い、文明の意味を問い直す

ワイドスクリーン・バロックWidescreen Baroque

圧倒的なスケールと奔放なアイデアが、理屈を超えた驚きを与える冒険

ミリタリーSFMilitary SF

戦争や戦場という極限状態を通じて、国家や人間の本質をシミュレートする

海洋SFMarine SF

未知の深海を舞台に、極限状態でのサバイバルや生命の根源に迫る

植物SFBotanical SF

植物を「謎の知性」と捉えることで、人間中心の価値観を揺さぶる想像力

サイエンス・ファンタジーScience Fantasy

魔法のような不思議な現象と、科学的な理屈が違和感なく共存する世界

SFミステリーSci-Fi Mystery

SF独自の設定を手がかりに、厳密なロジックで謎解きに挑む知的な推理

ニュー・ウィアードNew Weird

SFやホラーの枠を超え、不気味で生物的なリアリティで異世界を描き出す

ユーモア / 不条理SFHumorous / Absurdist SF

笑いと不条理を通じて、当たり前の現実がいかにヘンテコかを暴き出す

知性化SFUplift

人間が動物を「知性化」させたら? 進化への介入に伴う責任と共生を問う

ジュブナイルSFJuvenile / YA SF

若者が未知の科学や冒険と出会い、不思議な体験を通じて成長していく

世代宇宙船Generation Ship

何世代も続く宇宙の旅で、閉ざされた船内に生まれる奇妙な社会と文化

巨大構造物Megastructure

想像を絶する巨大な人工建造物を鏡に、宇宙における人間の小ささを問う

多元宇宙Multiverse

別の選択をした「自分」がいる並行世界を通じ、現実の意味を問い直す

ミュータントMutants

変異した「新人類」と、それを受け入れられない社会の対立と疎外を描く

仮想現実 / シミュレーションVR / Simulation

コンピュータの中の仮想世界と現実が混ざり合い、人間の形が変わりゆく

言語SFLinguistic SF

使う「言葉」が変われば思考や世界の見え方も変わる、という言語の不思議

パンデミック / サバイバルPandemic / Survival

恐ろしい病の流行で文明が崩れゆく中、それでも生きようとする人間の意志

ナノテクノロジーNanotechnology

超小型機械が身体を作り変える驚異と、それによって生じる新しい倫理の問い

未来史Future History

数十年から数千年先までの人類の歴史を、一貫した年表で描く壮大な物語

パレオフィクションPaleo-human SF

ネアンデルタール人など旧人類の生活を描き、人間の起源と本質を問う物語

社会派SFSocial SF

科学技術が社会や人間の心に与える影響を深く掘り下げ、現代の問題を鋭く映し出す

ダイイング・アースDying Earth

遠い未来、衰退した地球で最後の時を過ごす人類の退廃と美しさを描く

スペキュレイティブ・フィクションSpeculative Fiction

「もしも」の問いから始まる、現実を見つめ直すための幅広い物語群

スリップストリーム

Slipstream

スリップストリームとは、SFやファンタジーの意匠を借りつつも、既成のジャンル体系を無効化し、主流文学のリアリズムをも侵食する境界的な文学領域を指す。1989年に提唱されたこの概念の本質は、日常の亀裂から立ち現れる「認知的不協和」にある。論理では説明し得ない異物が現実を異化し、世界の自明性を揺さぶる点にその真髄がある。日本においては、安部公房が不条理な変容を通じて実存的危機を描出し、その先駆をなした。村上春樹は資本主義下の記号的世界と形而上学的な異界を接合し、現代的な虚無を定着させた。さらに記憶の消失や言語の越境を主題とする近年の動向を経て、この感性は深化を続けている。今やこの領域は単なる分類ではない。現実感が希薄化した現代において、世界の不確かな手触りを記述するための必然的な文学的マインドセットへと変容しているのである。

おすすめ書籍 / Recommended BooksPR

Slaughterhouse-Five
スローターハウス5
Slaughterhouse-Five
カート・ヴォネガット (1969)

自身の戦争体験におけるトラウマを、過去と未来を無作為に行き来する「痙攣的時間旅行」として表現する。自由意志を否定し、あらゆる瞬間が固定されているとする異星人の決定論的哲学を借用することで、凄惨な死と破壊の記憶を「こういうものだ」と受容しようとする祈りの書。

The City & the City
都市と都市
The City & the City
チャイナ・ミエヴィル (2009)

地理的に同じ空間を共有しながら、法と認識によって分断された二つの都市という設定が秀逸だ。隣人を「見ない」ことで成立する社会秩序と、境界を侵犯する殺人事件の捜査を通じ、我々の現実においても存在する不可視の壁や、共同体を維持するための集団的無意識のメカニズムを鋭く批評する。

Ice
Ice
アンナ・カヴァン (1967)

世界が氷に閉ざされていく終末的な風景の中、幻影のような少女を追う男の強迫観念を描く。物理的な氷河期と語り手の冷え切った内面が不可分に混じり合い、現実と妄想の境界が融解する。SFの意匠を借りて孤独と疎外の心象風景を極限まで純化させた、カフカ的な不条理劇。

Ficciones
伝奇集
Ficciones
ホルヘ・ルイス・ボルヘス (1944)

無限の書庫や円環する時間、架空の百科事典といった形而上学的なモチーフを用い、現実世界を迷宮のような虚構として再構築する。物語という形式そのものを知的な遊戯として扱い、論理と幻想が幾何学的に交錯するテキストは、後のあらゆるシミュレーション的想像力の源泉となった。

Never Let Me Go
わたしを離さないで
Never Let Me Go
カズオ・イシグロ (2005)

臓器提供のために作られたクローンたちの運命を、SF的な技術解説を一切排し、閉ざされた学園での記憶と人間関係の機微を通じて描く。抗い難い残酷なシステムの中で、それでも生の意味を見出そうとする静謐な語りは、生命倫理の問題を普遍的な実存の問いへと昇華させている。

The Wall
The Wall
安部公房 (1951)

ある日突然名前を喪失した男が、社会的帰属を失い、物理的な「壁」へと変貌していく過程を描く。シュルレアリスムの手法を用い、個人のアイデンティティがいかに脆い社会的合意の上に成り立っているかを寓意的に表現する。不条理な変身譚を通じて、現代人の孤独と疎外を乾いたユーモアと共に形象化した。

Hard-Boiled Wonderland and the End of the World
世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
Hard-Boiled Wonderland and the End of the World
村上春樹 (1985)

高い壁に囲まれた静謐な「街」と、情報戦争が続く近未来の東京。二つの世界が交互に進行し、やがて意識の深層で交錯する構成が秀逸だ。自己の意識と世界の関係性を問い直すメタフィクショナルな仕掛けと、ハードボイルドな文体が融合し、村上春樹独自の幻想的リアリズムを確立している。

The Memory Police
密やかな結晶
The Memory Police
小川洋子 (1994)

香水や鳥など、事物の概念が消滅していく島で、記憶狩りを行う秘密警察と静かに順応する人々を描く。抵抗ではなく喪失を受け入れる過程を淡々と綴ることで、自己の輪郭が世界から剥がれ落ちていく根源的な恐怖と、消えゆくものへの哀惜を寓話的な静けさの中で結晶化させている。

Tobu Kujaku
飛ぶ孔雀
Tobu Kujaku
山尾悠子 (2018)

「石切り場の事故以来、火が燃えにくくなった」という物理法則の欠損が、世界を不条理な迷宮へ変える。燃えぬ火を運ぶ茶会、人を襲う孔雀。因果律を排した悪夢的なイメージの連鎖が、感覚に訴える濃密なリアリティを構築する。言葉の魔術によって記述された、眩暈がするほど美しい日本幻想文学の極北。

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